2018年08月27日

法律雑誌に掲載されました

 波多江です。

 随分前に担当した事件の審判なのですが、法律雑誌に掲載されましたのでご報告です。

 掲載されたのは、「本人の長女による任意後見監督人選任申立ての直後に、本人が長女との任意後見契約を解除するとともに、長男と任意後見契約を締結したことから、長女が申立ての趣旨を法定後見開始に変更し、長男が新たに任意後見監督人選任を申し立てた事案に関し、長男は任意後見人の適格性を欠くとして、法定後見を開始することにつき「本人の利益のために特に必要がある」と認められることを理由に、後見を開始するとともに任意後見監督人選任申立てを却下した原審判について、原裁判所の判断は相当であるとして長男の抗告申立てを棄却した事例」というものです(判例時報2372号47頁)。

 皆さんも「後見」という言葉をお聞きになったことがあると思います。 判断能力が低下した方の代わりに、法律行為等をするための制度です。

 この後見制度には、裁判所に申し立てをして後見人を選任してもらう法定後見と、ご本人が後見人になってもらいたい人と契約をしてそういう状態になった時に後見人になってもらう任意後見という二つの制度があります。

 本人がそうなる前に自分で後見人になってもらう人を選んで契約をするという点で、任意後見の方が本人の意向を反映できる制度になっています。

 今回、法律雑誌に掲載された審判例は、この法定後見と任意後見のどちらを開始するべきかということが争われた事案です。

 この事案が、どうしてそんな問題になったかというと、当初、お母さんと長女が任意後見契約を締結していたのですが、その後、長女が任意後見契約を発効させようとしたところ、その任意後見契約が解除されて、長男を任意後見人とする契約が締結されて、長男がその任意後見契約を発効させようと裁判所に申立をしました。
 これに対して、長女が法定後見を申し立てたため、長男の任意後見と長女の法定後見のどちらを開始すべきかということが問題になりました。

 法律上の原則としては、任意後見契約が締結されている場合(正確には登記までされている場合)は、法定後見の申立てがなされたとしても原則として裁判所は法定後見の申立てを却下することになっています。本人による自己決定を尊重する趣旨と言われています。

 もっとも、「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」は法定後見を開始することができるとされています(任意後見法 10条1項)。
 本件では、この「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」にあたるとして、法定後見が開始されました。

 立法時の構想では、本人による自己決定を尊重するという趣旨から、任意後見を優先する制度とされていましたが、実際に運用してみると、想定していたようにはなっていないようです。
 高齢者を囲い込み自らを任意後見人とする任意後見契約を締結させるという事案もしばしば耳にします。親族間で財産をもつ高齢者の取り合いになることもあります。

 高齢者の判断能力が低下していることが多く、他方、認知症が進んでいても通常の会話程度であれば違和感なくできる場合もあることから、任意後見契約を締結する公証役場では、本人の判断能力の程度を的確に把握しにくいということも一因となっているのではないかと思います。

 自らの老後を信頼している人に託すという任意後見制度が、よりよく運用される仕組みになるように願っています。

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(波多江)

posted by あかつき法律事務所 at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の活動

2018年07月24日

公認会計士との勉強会

 石田です。

 先日、親しくさせていただいている公認会計士の先生方の勉強会に参加させていただきました。
 本当は、一応「メンバー」扱いしていただいているのですが、仕事やら何やらで出席できないことが続き・・・「もし今日も欠席だったら、除名するところだった!」と言われてしました(汗)。除名されずに良かったです・・・。

 その日のお題は、事業承継の際の税の特例について。事業承継に関連して発生する贈与税や相続税の支払いを猶予できる制度です。

 中小企業庁ホームページ

 税法も「法律」ではあるのですが、普段あまり扱わないのと、税は法律だけではなく様々な通達で細かく規定されていて、正直、門外漢にはかなりとっつきにくい分野です。それでも専門家である会計士の方の説明を聞き、文献を読むことで、だいぶ理解が進みました。

 この税制については様々なところで解説等されており、一部には事業承継の切り札であるかのように書かれているサイトなどもあるようです。
 ただ、よく読んでみると、要件はかなり面倒で、その効果も限定的であり(基本的には「先送り」に過ぎない)、しかも、一旦これに乗ってしまうと途中でやめることが難しいといった点もあって、利用する場合には事前にかなり慎重な検討が必要だろう、と思われました(会計士さんもそのような意見で一致していました。)。

 私自身のことを考えると、顧客からもしこの制度の利用について相談された場合、上記のような点をよく説明した上、利用する場合には、必ず税の専門家(上記の知り合いの会計士さんなど)と一緒に受けることになると思われます。
 餅は餅屋、専門的な分野については専門家の助けを借りることが、良い仕事の基本と考えています。


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(石田)
posted by あかつき法律事務所 at 09:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の活動

2018年06月12日

LGBTシンポジウム

 少し前のことになりますが、3/25、福岡市主催の「LGBTシンポジウム 多様性を認め合う社会の実現を目指して」にパネリストとして参加してきました。

 第1部は基調講演として、渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎さんのお話をお聞きしました。
 永田さんは、以前GAPに勤務されていて、そこでLGBT支援のさまざまな活動をしてこられた方です。
 ダイバーシティという言葉は、最近よく聞くようになりましたが、永田さんの「ダイバーシティだけではだめで、インクルージョンが必要です。」というお言葉が大変印象的でした。

 第2部はパネルディスカッションで、NPO法人Rainbow Soup代表・五十嵐ゆりさんをコーディネーターとして、九州レインボープライド代表・あなたののぶゑさん、三好不動産執行役員・松本茂規さん、永田さん、そして福岡県弁護士会LGBT小委員会小委員長として私がパネリストとなりました。
 何を話したか? ・・・もう2か月以上も前のことで、よく覚えていません・・・(^^;) こういう報告記事は、すぐに書かないとダメですね、本当にお恥ずかしい・・・。私がLGBT支援に関わるようになったきっかけや、それを通じて感じたことなどをお話しした気がします。

 今年度は副会長の職にあるため、なかなかこの活動に深くコミットできていないのですが、今後も関わっていきたいと思っています。

DSC_2806.JPG


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(石田)




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