私は、県弁護士会の生存権の擁護と支援のための緊急対策本部(生存権対策本部)に所属しています。
同本部では、生活保護当番弁護士制度(生活保護支援システム)を運営していて、登録弁護士百数十名ほどによる、生活保護に関する無料法律相談や、必要な場合には代理人として生活保護の申請に同行するなどの活動を行っています。
もっとも、生活保護の問題は、取り組んでいる一部の弁護士はともかくとして、一般の弁護士にはこれまであまりなじみのない分野で、実務の運用などについて分からないところも多々あります。
そこで、登録弁護士のメーリングリストを作り、分からない点などはどんどん聞いてもらって、詳しい弁護士が回答する、ということにして、専門性の担保を図っています。
さて、そのメーリングリストも設置からだいぶ時間が経過し、質問・回答が積み重なってきました。これはまさに、実務を行う上で直面した生の問題の集積であり、これをそのままほっとくのはもったいないのではないか、これらをすくい上げてまさに「実践」マニュアルを作成してはどうか、という声が、生存権本部内から上がりました。
これが、昨年の後半の話し。
なぜか私がその編集長に任命され、メーリングリストから質問・回答を抜き出すこととなりました。
最初は、まあメールをコピー&ペーストしていけばいいんでしょ、とたかをくくっていましたが、実際やり始めると、どうしてどうして・・・めっちゃくちゃ大変で・・・。昨年末時点で総数384通のメールに目を通し、問い答えを整合させ、コピー&ペースト・・・。何と228頁にもなりました(笑)。
ただまあ、抜き出しさえしてしまえば、後はきれいに整形すれば、一応Q&Aの形になるか、と思っていたのですが、これもまた、実際に始めてみるとそんな簡単な話ではありませんで・・・。
メールで質問に回答するだけなら、「それはこうなってますよ」と言えばいいわけですが、マニュアルにするとなると、その根拠が分からないというのでは困るので、回答全てについて、法律や通知などにあたって根拠を調べる必要が生じました。
もちろんこれは私1人だけでできるはずもなく、生存権本部の精鋭メンバー数名で編集班を組織しました。
それから、だいたい月1回くらいのペースで執筆・編集会議を繰り返し、夏の合宿でも議論し・・・もうできるだろう、もう完成するだろう、と思いつつ、でも何せ分量が多いため、そうそうすぐにはできあがらず・・・。
そしてようやく、今週の会議で、内容について一通りの検討が終了しました。
ふ〜。
Q&Aを作ろうという話しが出てから、約1年ですか。長い道のりでした・・・。
今後、細かいチェック作業を経て、年内には完成させて、登録弁護士に配布する予定です。そしてこれを用いて、「生活保護入門」といったものではなく、一歩進んだ内容の会内研修なども行っていくことになると思います。
昨今、生活保護費の切り下げについて報道されるなど、生活保護に対する風当たりは相変わらず厳しいものがあります。もちろん、不適切な事例が存在することは否定できませんが、その是正を図ることと、生活保護制度全体を後退させることは、全く別の話です(なお、一昨日から西日本新聞朝刊の「ポンきちの教えて!」というコラムで、生活保護の特集が連載されています。現状の問題点をコンパクトにまとめてありますので、ぜひ読んでみてください。)。
このようなマニュアル等で専門性を高め、本来生活保護を受給できる方が不当に申請を拒まれるといった事態を防ぐことも、我々弁護士に求められていることだろうと思います。
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(石田)