昨日は東京出張。これまでも何度かこのブログに書いてきた、日弁連消費者問題対策委員会に出席してきました。
例によって議論の内容は多岐にわたりましたが、その中で、民法(債権法)改正の要綱仮案がまとまった、という議題がありました。
これについては新聞報道もされていましたので、ご存じの方もおられるかも知れません。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H0K_W4A820C1EA2000/ また、本日現在、要綱仮案の第二次案までは、法務省のHPにアップされています。
http://www.moj.go.jp/content/000125959.pdf 民法改正については、初期のころに県弁護士会の関係で多少関わっていましたが、そのころの何でもありの議論からすると、とうとうここまで来たか、という気がします。いよいよ、民法の改正が現実の日程に上ってきます。
民法という私法の基本法の改正ですから、我々の仕事からするともちろんどの改正も影響は大です。
その中で、このブログでも何度も取り上げている「医療過誤」の点から見ると、特に次の2つの改正が注目されます。
1.消滅時効の期間の変更
要綱仮案(第二次案)第7が消滅時効の項になっています。そこでは、現行法の10年から、以下のように改正することが提案されています。
(1)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
(2)権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
もっとも、医療過誤で問題となる人の生命又は身体の侵害による損害賠償の請求権については、(2)について20年間とされています。
これまで、不法行為は3年で消滅時効にかかりますが、債務不履行構成であれば10年間は請求が可能でした。それが、上記(1)により、5年で消滅時効にかかるということになります。
医療過誤、特に重篤な被害の場合には、ご本人やご家族は、どうするか、悩んで悩んで、相当時間が経ってからようやく弁護士に相談に来られる、ということがよくあります。5年で消滅時効にかかるとしてしまって果たして良いのか、と感じます。
2.法定利率
同じく要綱仮案(第二次案)第9では、法定利率の改正が提言されていて、現在の民法で定めている5%から、3%に引き下げると提案されています。しかもこの3%はとりあえずのもので、その後、3年ごとに変更することとなっています。つまり、変動金利制を採用しています。
これは、医療過誤の被害者(請求権者側)からすると、一見不利益な改正のように思われるかも知れません。
しかし実際には、そうとばかりは言えません。
死亡や後遺障害といった損害の場合、逸失利益という損害項目があります。これは、そのような被害に遭わなければ将来これだけの収入を得ることができたはずなのにそれができなくなってしまった、その分を賠償せよ、という考え方です。
ただし、本来であれば、今後10年なり20年なり、長い期間をかけてそれだけの収入を得るはずだったのに、損害賠償ということになれば、一時金で一度に受け取ることになります。したがって、その間の利息分を、控除するということになっています(中間利息控除)。
現在、この中間利息控除は、民法が定める法定利率である5%で計算されています。現実には、この超低金利の世の中で、5%の利率による運用など到底できるわけはないのですが、実務上、このように計算することとされていて、逸失の期間が長いほど(被害に遭った年齢が若いほど)、多額の控除を余儀なくされていました。
これについては、利率が下がった方が、被害者にとっては有利に働くのです(なお、中間利息控除については明文の規定はありませんでしたが、これについても「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、損害賠償の請求権が生じた時の法定利率によってこれをしなければならない。」という明文を置くことが提案されています。)。
そのほかの部分にも、非常に重要な改正提案が目白押しです。
日々の業務に追われていると、なかなか法律の改正作業にまで目を配ることが難しいのですが、我々の業務、また国民全員の生活に直結する改正ですので、今後も注視していきたいと思います。
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posted by あかつき法律事務所 at 10:19|
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