2013年09月06日

集団的消費者被害回復制度シンポジウム


 去る8月28日(水)、いつものごとく、東京の日弁連会館で、消費者委員会に出席してきました。

 そして今回は、委員会終了後の午後6時から、集団的消費者被害回復制度に関するシンポジウムが開かれたので、それに出席してきました。

 シンポジウムの名称は、

  「えっ、まだ成立していなかったの?! 集団的消費者被害回復制度」

・・・何ともセキララというか、キャッチーな名称ですね(笑)。


 ところで、集団的消費者被害回復制度って、何だと思いますか?

 以前、「日本版クラスアクション」などと呼ばれたこともありますが、これだとアメリカの、莫大な損害賠償金をぶんどっていく、というイメージが強く、事業者の方にいらぬ警戒心を持たせてしまうため、最近はあまり使われなくなりましたね。


 平成12年、消費者契約法という法律ができました。

 これは、消費者と事業者の間には、越えられない情報や交渉力の格差が存在することから、一定の場合には消費者から契約の取り消しができるようにしたり、消費者の利益を不当に害する契約条項を無効にしたりといった法律です。

 例えば、自宅にやってきて契約を勧誘する業者に対し、消費者が、帰ってくださいと言ったにもかかわらず帰ってくれない、それによって消費者が困ってしまい、契約をしてしまった、といった場合には、その契約を取り消すことができます(不退去型、消費者契約法4条3項1号)。

 これは、従前よりも消費者の利益を重視した法律であり、すばらしい成果でした。ただ、これは実際に被害が発生してから(契約を締結してしまってから)の対応であり、事前に被害を防止するものではありませんでした。


 そこで平成18年、消費者契約法が改正され、適格消費者団体による消費者団体訴訟という制度が入りました。

 これは、消費者契約法(と、景品表示法と特定商取引法)上の不当行為について、事業者に対し、内閣総理大臣の認定を受けた「適格消費者団体」が差し止めを請求することができ、改善が見られない場合には、裁判所に差し止め訴訟を提起することができるという制度です。

 例えば、契約をキャンセルした場合は、その時期などの事情は問わず、契約金は一切返しません、というような条項があった場合、これは消費者契約法9条に反するとして、そのような条項の使用を差し止め請求する、というようなことが可能です。

 ちなみに、「適格消費者団体」は、現時点で全国に11団体あり、福岡にも「消費者支援機構福岡(CSOふくおか)」があります。

 これは、単に取り消し条項が定められているというだけでなく、これから発生するかも知れない被害を防ぐことができるという意味で、画期的なものと言えます。
 しかし逆にこれは、今後の被害発生を防ぐものであり、既に発生している被害について、お金を返してもらったりといった個別の救済が行われるものではありません。


 そこで、今回、集団的消費者被害回復制度の制定が議論されているわけです。

 この訴訟の仕組みは割と難しいのですが、ごく簡単に言うと、

・多数の消費者が被害に遭っている事案について適格消費者団体が、事業者に対して訴訟を提起し、その事業者の行為が違法であり、消費者に対し損害賠償なりお金の返還なり、金銭の支払い義務があることを裁判所に認定してもらう。

・業者に、消費者に対する支払い義務があることを認定してもらったら、被害に遭っている消費者に呼びかけ、訴訟に参加してもらい、業者に支払いをさせる。

という形になっています。

 消費者被害は、個々の消費者にとっては重大事ですが、客観的に見ると、必ずしも金額の多いものばかりではなく、個人で弁護士に依頼をして被害回復を図るには経済的に見合わない場合も少なくありません。そのため、少なからずの消費者被害が、泣き寝入りのままになっていると言われています。

 それに対し、この制度が導入されれば、まずは第一段階で適格消費者団体が業者の責任の有無を明らかにし、消費者はそれが明らかになった後に、第二段階として加わればよいということになり、消費者の負担が非常に軽減されることになります。

 これまでは泣き寝入りとなっていた消費者被害の回復につながることが、大いに期待されています。



 さて。このように書くと、とてもいい制度じゃないか、早く作ればいいのに、と思われるでしょう。ただ、シンポジウムの名称が「えっ、まだ成立していなかったの?!」とあるとおり、まだこの法律は成立していません。

 消費者庁や、弁護士会の消費者委員会の数年来の悲願であり、先の国会で成立が期待されましたが、ご存じのとおり、先の国会の終盤は政局に翻弄され、重要法案がいろいろと廃案(ないし継続審議)となりました。この法案も同じように、残念ながら時間切れ・・・・。

 事業者の方から見ると、こんな制度ができたらクレーマー的な消費者からどんどん訴訟が起こされ、ばんばん損害賠償を取られるのではないか、という濫訴に対する警戒が非常に強いようです。

 ただこの点には多分に誤解があり、そもそも誰でも訴訟を起こせるわけではなく、内閣総理大臣の認定を受けた特定消費者団体しか訴訟は提起できませんし、対象となる請求権もかなり絞られています。濫訴への心配は、杞憂だと思います。

 むしろ私としては、どの業界にも悪徳業者はいると思いますが、そのような業者にはきちんと損害賠償義務を課し、払えないのであれば速やかに退場を願う、という意味で、まじめにやっている業者のためになる制度だと思うのですが・・・。


 この法案は、次の国会で審議されることが予定されています。次こそは、無事に成立し、早くこの制度が始まることを期待しています。

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(石田)


posted by あかつき法律事務所 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費者関係

2013年08月29日

消費者委員会夏合宿(特に訪問購入について)


 先週の金曜、土曜と、消費者委員会の夏合宿に行ってきました。

 委員会合宿については、これまでにも何度かこのブログに書きました。夏や冬に、普段の弁護士会館を飛び出して、どこぞのホテル・旅館に宿をとり、集中的に勉強会を行うというもの。
 弁護士のスキルを高め、委員会としての目的意識等を共通にするという目的のほか、委員間の親睦を深めたり、温泉につかって日々の激務にほっと一服、というような意味合いもあります。


 今年の夏合宿も内容盛りだくさんで、私が発言する機会も何度かありましたが、私が今回特に聞きたかったのが、朝見行弘弁護士による、改正特定商取引法についての講義。

 特定商取引に関する法律(特商法)は、我々消費者問題に取り組む弁護士が日常的に用いる法律で、訪問販売や連鎖取引(マルチなど)を規制している重大な法律です。

 今回の改正により、その法律にもう1つの規制取引類型が加わりました。それが「訪問購入」です。

 え、訪問販売じゃないの? と思われるかも知れませんが、「購入」で合っています。

 最近、テレビのニュースなどで、「押し買い」という言葉を聞いたことはありませんか?

 1人暮らしの高齢者などを狙い、一般的な中古品買い取りを装って声をかけ、「宝石はありませんか」などといって宝飾品などを出させて、安い値段で無理矢理買い取っていくという手法で、被害が頻発して国民生活センターからも以前から情報提供されていたものです。

 http://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen140.pdf

 これについて、訪問販売類似の、クーリングオフ制度等が整備されたのが、今回の改正の目玉です。もしこのような被害に遭い、後でよく考えたらやっぱりおかしいと思う、買い取られた物を取り戻したい! と思った場合には、すぐに消費者センターや弁護士に相談すれば、クーリングオフで契約を取り消すことができるようになっています(期間制限や一部除外もありますので、とにかく、すぐに相談してください。)。

 http://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen157.pdf

 これらの規制は、本当にいたちごっこです。「世に盗人の種は尽きまじ」とはよく言ったもので、盗人とまではいかなくても、悪質・悪徳商法は、規制を行っても行っても、手を換え品を換え、次々に発生します。

 これらを根本的に解決するためには、もっと大きな規制の網をかけることが必要なのかも知れませんが、法律というのは難しいもので、一定範囲を規制するために大きな網をかけると、被害が生じていないところまで規制が及んでしまい、自由な経済活動を阻害してしまうことにもなりかねません。

 発生した事例をきちんきちんと解決していくこと。大きな被害には迅速な規制で対応すること。消費者に速やかに、かつ適切に、情報を提供すること。
 消費者被害の防止・被害回復のためには、なかなか一挙解決の魔法の杖といったものはなく、このような地道な努力が必要になるのです。


 ・・・と、このようなことを学びつつ合宿を終了し、帰りは少し足を伸ばし、南阿蘇の水源を見学して来ました。

 毎分60tもの湧水量を誇るという白川水源。初めて見ました。すごいものです。その清冽さに、本当に驚きました。

 涼しい風、冷たい水に癒され、また週明けから仕事頑張ろう!と英気を養い、帰ってきた次第です。

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(石田)






posted by あかつき法律事務所 at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費者関係

2013年07月21日

質屋営業法改正意見書


 7月17日、福岡県弁護士会は、「質屋営業法改正意見書」を決議しました。

  http://www.fben.jp/suggest/archives/cat_4.php

 同日の常議員会に上程され、決議されたものです(私も今年度の常議員を務めています。)。

 この意見書の内容は、上記リンクから直接本文にあたっていただければと思いますが、意見の趣旨としては、以下の6項目となっています。


  質屋営業法(昭和25年法律第158号)を以下のように改正することを求める。

  1 質屋営業法1条に質契約の定義として、「質置主は、質物の流質処分を甘受する限り、質屋に対して借受金の弁済義務を負わず、流質処分後は借受債務が消滅する金銭貸付契約」という規定を付加する。

  2 質屋営業法18条(質物の返還)につき、質置主が元利金を支払う場合に質物の返還を即時に受けうること及び質置主の流質選択の機会を与えるため、以下の規定を設ける。
  @弁済について、金融機関等の自動引落その他自動決済システムを利用することを禁止すること、弁済は、必ず、質契約が成立した営業所において行う旨の規定を設けること。
  A質屋は質置主が元利金を弁済しようとする場合、質置主に対し、予め、流質処分を選択できること、流質処分を選択した場合、借受金の弁済義務を負わない旨告知しなければならないとの規定を設けること。

  3 質屋営業法19条(流質物の取得及び処分)に、以下の条項ないし規定を加える。
  @「質屋が、流質期限を経過した時において、その質物の所有権を取得した後、質屋は質置主に弁済の履行を請求してはならない。」
  A質置主が流質を選択した場合、流質期限経過前でも質屋はその質物の所有権を取得すること、この場合、質屋は質置主に対し弁済の履行を請求してはならない旨の規定を設けること。

  4 質屋営業法30条(罰則)につき、改正後19条の違反(流質後請求)の場合、貸金業法47条の3と同様に「二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」の罰則を付する。

  5 貸金業法20条の2(公的給付に係る預金通帳等の保管等の制限)の規定とその罰則(同法48条)と同様の規定を設ける。

  6 質屋に認められた特例高金利(年109.5%)を引き下げる方向で検討する。


 この意見は、直接には、偽装質屋が社会問題になったことに端を発しています。偽装質屋とは、質屋営業を装ってその実、高利の貸金業と同様の営業を行っているというものです。

 偽装質屋:被害急増、ヤミ金業者が高齢者ら狙う(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/news/20130523k0000e040160000c.html

 典型的な手口としては、質屋取引であることを装うため、顧客から一応、何らかの品物を預かります。この品物は、例えば100円ショップで売っているような安物のネックレスだったりします。そして、このような安価な品物を質物として貸すにしては多額の金額を高利で交付します。返済は、年金が振り込まれる口座から質屋へ自動送金されるシステムが利用されていることが多いようです。

 通常、質屋は、質物の価値に見合う金員を交付するものであって、100円ショップの安物の品物を質物にして多額の金員を貸すなどということは、通常の質屋の形態としてはあり得ません。
 質屋に、貸金業者よりも高利での貸し付けが認められていることをいいことに、法を潜脱しようとしていることは明らかです。

 上記意見書は、このような法の潜脱を許さないよう、質屋営業法の改正を求めるものです。上記のような形態の偽装質屋は福岡が発祥の地であるとの不名誉な話もあり、ぜひこの意見書をきっかけに、早期の法改正を行ってほしいと思います。


 このような法の隙間を狙った悪徳商法・悪徳業者は、残念ながら、いつの時代にも現れるものです。

 個々の事案に関しては、弁護士による適切な解決を積み上げていき、他方で、迅速に立法や法改正を行って一般的な対処を行う。この2つを車の両輪として問題に立ち向かっていくのです。

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(石田)

posted by あかつき法律事務所 at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費者関係