2012年10月29日

韓国医療紛争調停仲裁院視察ツアー(その3)


 最後に、19日午後は、仁川地方法院の医療専担部(日本で言う、地方裁判所の医療集中部)訪問でした。

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 仁川地方法院

 仁川は、ご存じ仁川空港がある都市です。ソウルに近く、ソウルのベッドタウンとして、相当な人口を有している大都市です。

 その地方法院で、医療専担部の部長、左陪席裁判官などと懇談の機会を持ちました。
 ただ、韓国の司法制度は日本とそれほど大きくは変わらず、時間が短かったこともあって、仲裁院でのような突っ込んだ議論にはなりませんでした。

 印象的だったのは、医療専担部における医療過誤審理においては、医療の問題について争いがある場合には基本的に鑑定を採用すること、判決等の裁判所の判断も、おおむね鑑定に沿うこと、という点です。また、医師になかなか鑑定を引き受けてもらえないというのは、日韓に共通する悩みのようでした。

 それから・・・部長裁判官のおもむきや、左陪席裁判官のなんとな〜く「エリートです!」という雰囲気を醸し出している様など、日本とそっくり!だったのが、ちょっと笑えました(笑)。


 以上で韓国における視察は全部終了。

 視察団の多くのメンバーはその日は韓国に泊まって、翌日帰国なり別の場所の視察なり、ということでしたが、私は用事があったため、地方法院から直接仁川空港に向かい、その日のうちに帰国しました。
 20時前には福岡に着いて、これは東京出張より全然早いなあ、と思ったものです。


 駆け足での2日間の視察旅行でした。

 まだまとまった考察はできておらず、印象・感想に過ぎませんが、感じたことを書きます。

 韓国における医療紛争調停仲裁院の創設は、日本においても非常にインパクトを持つものになる可能性があると思います。
 先に記述したような国情の違いがあるとは言え、類似の司法制度を持つ隣国において、医療過誤に関し、全件鑑定を行って損害賠償事件として解決するというドラスティックな制度が構築されたということは、非常に大きな意義を有します。
 このような制度が日本でも創設されれば、医療被害者の経済的負担や実際上の手続負担は大幅に緩和されることになるし、医療機関にとっても、解決に長時間かかる裁判のを回避できるという意味でメリットは少なくないと思います。

 他方で、これまでもこのブログで書いたように、日本においても、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」や、産科医療補償制度が始まっています。
 これらの制度においては、損害賠償という観点よりもむしろ、実際に何が起こり、何が死亡(脳性麻痺)の原因なのか、という「原因究明」や、今後の再発防止策の提言などが重視されています。

 前記のとおり、韓国の医療紛争調停仲裁制度がこの観点についてどのように取り組んでいるのかは、調査不足により現時点ではよく分かっていないのですが、少なくとも、我が国において同様の制度を立ち上げる際には、単に損害賠償や紛争の解決というだけではなく、原因究明・再発防止の観点が必ず必要になってくると思われます。
 そのような観点をどのようにして調和させていくか、日本における検討の深化が期待されるとともに、前述のとおり、医療紛争調停仲裁制度についても、応諾率が40%と必ずしも高いとは言えない現状がどのように変化していくか(改善されていくのか)など、今後も注目が必要と感じました。


 さて、次はしょーもないおまけです(笑)。

 おまけに続く。

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(石田)
posted by あかつき法律事務所 at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療関係
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